2018年8月5日の日曜日の17:00から、大阪難波の高島屋前で行われた「杉田水脈議員の辞職を求める大阪緊急街宣」を支持しに、私もこの抗議活動イヴェントに出かけて行った。その時「この人、なんか見たことある!」という男の人がいたのだが、それが南和行弁護士であった。あとで思い出したのだが、南さんの顔を知っていたのは、2013年の8月にテレビで放映された「映像'13」という1時間のドキュメンタリーをビデオに録画し、それを見ていたからであった。
「映像'13」について詳しくはこちら:
http://gladxx.jp/news/2013/08/3440.html
TBSオンデマンド
MBSドキュメンタリー「映像’13」 弁護士“夫夫”
https://streaming.yahoo.co.jp/c/y/00505/v13040/v1000000000000006466/
その8月5日の難波の街宣の終わりの方で、南和行弁護士が行ったスピーチが大変素晴らしく、それを聞いて私は南さんのファンになってしまった。その演説にとても感動した私は、南さんにメールを送って感謝の気持ちを述べようかと思ったほどである(実際はメールは送らなかったが…)。
「杉田水脈議員の辞職を求める大阪緊急街宣」模様はこちら:
(南和行弁護士の素晴らしいスピーチは52:00~59:00あたり)
https://www.youtube.com/watch?v=MkwElZr9wHg
#0805杉田辞職しろ大阪街宣
そしてその日、家に帰ってから5年前に録画したビデオを取り出して「映像'13」を再び見た。とても良い内容で、その後、友人にそのビデオを見せたりもした。それからしばらくして「愛と法 / OF LOVE & LAW」(2017年 戸田ひかる監督 94分)という、南和行さんと吉田昌史さんの弁護士“夫夫”の新たなドキュメンタリー映画が公開されるとネットの情報で知った。そう、私は映画の公開を大変楽しみにしていたのである。先日その映画が大阪で公開され、私も早速観て来たのであるが、期待がすごく大きかったせいか、その出来になんだかもの足りないものを感じてしまった。「これって罪ですか?」
「それ、罪じゃありません!」
ドキュメンタリーでは弁護士“夫夫”が扱っている裁判の内容がずっと続いていて、二人の愛の生活が、あまり印象に残らなかったからかもしれない。弁護士“夫夫”がずっと仕事に忙殺されてるようで、お疲れ気味のカップルを見ているのは、かなりしんどかった。実際、二人の現在の日常生活がそうなのかもしれないが、ゆったりくつろぐ休暇中の二人の姿も見たかったと思う。テレビの「映像'13」では、二人が旅行に行った時の模様や、仲間たちとのバーベキュー、パトリック・リネハン大阪神戸アメリカ総領事(当時)とその夫であるエマーソン・カネグスケさんとの豪華な食事会の様子など、空間的な広がりのある、素敵な場面が色々あったので、そういったシーンがこの映画にも多くあれば、観客も一息つけるし、もっとメリハリというか、コントラストがあってよかったのではないだろうか?
それと気になったのは、現在の“夫夫”の法的な位置づけである。2018年現在、日本では同性婚がまだ法的に認められてはいない。お二人が2011年に結婚披露宴を行ったのは映像で出てくるのだか、それが単なるお披露目のイヴェントだけで終わっているのか、実際に養子縁組などをして、なんらかの法的に認められた関係であるのかが説明されていないので、そこがよくわからない。二人が望んでいるらしい、同性カップルとして里親になる、とういことにはどういったハードルを越えなければならないのかも、特に説明されていないのが気になった。
もうひとつ、山本なつおさんという方が唐突に出てきて一枚の紙を見せて「この一枚の紙の為に…」といった話をするのだが、そこが説明不足で「え、何?何?」となってしまった。なつおさんは見たところ、トランスジェンダーのようにも見えるし、発言では「母と娘」になってるし、「え、どういうこと?戸籍の性別の変更かなにかの話が突然出てきたの???」と、混乱してしまった。でも、シェフになりたいみたいな話もしていたので、なつおさんの映像の前に出てきた、後姿のみで登場した無戸籍問題の男の人?で「料理関係の仕事につきたかったけど、戸籍の問題であきらめてしまった」と話していた方と、このなつおさんはもしかして同一人物なのか?とごちゃごちゃになってどうもスッキリしなかった。もともと無戸籍問題の記者会見では顔を隠した長い髪の女性が出てきていたし、いったいこれはどうなってるんだと、とても理解しづらく、ここはまったくの説明不足だと思う。この3人はどう繋がるのか?もしかして3人がみな同一人物とか?どうも編集に問題があるのではないかと思ってしまった。何も説明されていないので大変混乱させられる。
“夫夫”と一時同居することになる「ゲイのことはテレビで見て知ってるから」と言っていた若者カズマ君へのインタビューもちょっとツッコミ不足である。実際ゲイのカップルと同居してみて、テレビで見ていたゲイとどう違った(あるいは同じだった)のか、そういう点を訊いてみたかったし、カズマ君の現在の恋人(女性)の驚きの反応にも、何らかの質問を投げかけてみてもよかったのではないだろうか?
また、勉強会が終わった後、南弁護士に否定的な意見を言ってくるオヤジがちょっと映し出されるのだが、そういう人物をもう少し カメラが追っていたらもっとゲイや同性カップルに対する凝り固まった偏見があぶりだされて良かったのではないかとも思われる。南さんが多忙でその人物の相手をする時間がなかったとしても、そのオヤジが自分の主張を述べるのをカメラにとらえるだけでも何らかの差別意識や嫌悪、恐怖が、そこに映し出されたのではないだろうか?「私の本を読んでください。すべて書いてありますから」という南弁護士の言葉で、やりとりが終わってしまったのが残念であった。
この映画には英語字幕がついているのだが、「この日本語はどう訳されているのだろう…」と気になってついついそちらを目で追うので、結果、映像に集中するのを妨げることになってしまっている気がする。
映画を観終わって、二人が扱っている裁判の話だけで映画が終わってしまったという印象が強かった。「え、これでもう終わり?」と、どうも自分が期待していたものとは違っていて、かなりもの足りなかった。ゲイ・カップルの素敵な生活が見たいという私の望みは、やはりこのドキメンタリーには、要求しすぎなのだろうか?
私は南和行弁護士のファンである。だからこのドキュメンタリー映画を支持したいし、多くの人に見てもらいたいという気持ちは当然ある。しかし、残念な部分が色々あって観終わったあと、手放しで褒め称えるということは出来なかった。ドキュメンタリーではどこまで突っ込めるかが、監督の力量ではないだろうか?映画の素材は素晴らしいのに、そこがとても残念である。もともと面白い題材をただ撮っているだけではダメなのだ。でも、私はもう一度、今度は友人を連れてこのドキュメンタリー映画を見に行くつもりでいる。もしかしたら私が見逃している部分があったかもしれないし、今度はもっとよく理解できるかもしれない。また友人の意見も聞いてみたいという気持ちもあるからだ。
色々厳しいことを書いてしまったが、これは、皆さんにもぜひご覧になっていただきたい作品であり、色んな人に意見を表明していただきたいドキュメンタリー映画であることは確かである。
追記:弁護士“夫夫”の著作「僕たちのカラフルな毎日」も早速購入いたしましたよん。
追記2(2018年10月4日):
・同性婚
・同性カップルが里親になること
・君が代不起立裁判
・ろくでなし子裁判
・無戸籍者裁判
この5つそれぞれが、各90分のドキュメンタリー映画を撮れそうな程、大きなテーマである。それを94分の1本の映画でまとめて一気に見せられるので、“ツッコミ不足”、“もの足らん”、“ごちゃごちゃや”、“なんか疲れたわ” という感想になったのではないか? 監督さん、ちょっと欲張りすぎたのでは?
追記3(2018年10月7日):
2回目観てきた。やっぱり説明不足でわかりにくい部分が気になる。ドキュメンタリーでそれは致命的では?
吉田昌史弁護士が「仕事を辞めた」と発言するシーンがあるのだが、それがいつのことかまったく不明で、「え、弁護士辞めたの?もしかして休職してるという意味?」と混乱させる。もっとテロップで分かり易くすべきでは? この部分、私は後に弁護士“夫夫”の著作「僕たちのカラフルな毎日」(←素晴らしい内容!)を読んでやっとなんのことか理解できた。
今回の観賞で、“無戸籍者A”(髪が長く顔を隠した女性に見える人)、“無戸籍者B”(声から男性に思える後姿のみ登場の人)、そして“山本なつお”さん(トランスジェンダーに見える人)がいることが、わかったが、この“無戸籍者B”と“なつお”さんがどうやら、同一人物のように思える(後姿の無戸籍者Bらしき映像がなつおさんの部分に挟み込まれる為)が、実際どうなのかは不明。もし同一人物なら、「無戸籍者Bは、山本なつおとして戸籍取得」という説明がなぜないのか、理解できない。なつおさんが親と喧嘩したと発言するのだが、なぜなのか、どういった問題点がそこにあったのかも、まったく触れられていない。
それと、ある無戸籍者の母親が「この子が死んだら、誰が一体この子の存在を覚えていてくれるのだろう?」という場面があるのだか、「はあ?」という感じである。無戸籍であるということは、そんな感情レベルの問題ではないだろう。日本で戸籍がないということは、「生きていく上で」とてつもない困難を伴うことである。‘死んでも覚えていてもらいたい’なんていう感傷的な発言場面を入れるなら、もっと大切な入れるべきシーンがあったのではないだろうか?
取り扱った題材はすごくよいのに、作りが悪くてイライラ、モヤモヤさせられる点が多いドキュメンタリーになってしまったのが、とても残念である。
最後に:
この↑ポスターやチラシならば、あのドキュメンタリー内容でも納得いくが、弁護士“夫夫”を、集客の為か前面に押し出して宣伝しているので、私のように「なんか期待してたものと違うぞ」と思ってしまうのではないだろうか?人間ドラマや恋愛映画の短い一場面のセックス・シーンを、ビデオやDVDのジャケット写真に使って、エロエロ映画に見せて売る商法と同じやり方のような気がする。誤解を招く広告、JAROに訴えたくなったわん。責任者、出てこいっ!