Kontaの歓びの毒牙

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ユーミンの罪というより、酒井順子の罪でしょ!

 知人が買ったというので借りて読ませていただきました、酒井順子さん著「ユーミンの罪」。一曲一曲の分析はかなり鋭い部分もあり面白いんじゃないかな。読んでいる間の数時間は笑わせていただきました、楽しませていただきました。ただし、全体を読み終わると、結局この本の目的は、「負け犬という売りの酒井順子のキャラクター」を際立たせる為だけに、誰もが知ってるユーミン(松任谷由実 / 荒井由実)の歌(の一部)を利用しただけじゃないの?と思いました。

 ユーミンを使って、面白いこと書いて、「ユーミンの罪」なんていう人目を引きそうなタイトルをつけて(これは出版社・編集者が考えたんだろうけどさっ。雑誌連載中は「文学としてのユーミン」という題だったらしい。)、本を売りたいだけなんですよね~。ユーミンが発表し続けてきた芸術作品(ユーミン自身が歌った作品だけでも2013年末現在で約400曲あり)を利用し、その中のほんの一部の「自分の論を展開するのに都合のいいユーミンの歌詞だけ」を取り上げて(ユーミンの作品には結婚の歌は沢山あるし、出産の歌さえもあるのに)、“ユーミンに踊らされた私、ユーミンを聞いていたおかげで負け犬になった私…”を売り込む本を、とっても上手に一冊にまとめたと言えるでしょうね。あっぱれ!

 でもさ~、それはとんだお門違いよ!つうかさ~、酒井順子さん自身が、ユーミンの歌詞を鵜呑みにするほど馬鹿じゃないのは明らかだし、もしこの本を読んで、「そう~、そうなのよ」と思う読者がいたら、それはその読者がアホなだけなんですよ。こんな文章を書く女が、ユーミンの歌詞を、この本の中で書いてるみたいに、そんなにナイーヴに信じるなんて絶対ありえないことよ。ユーミンに踊らされた私…は、明らかに自己演出でしょ。誰かに踊らされる程、この女、ヤワじゃないよ!この本には真っ赤なウソがあるわ。

 

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 酒井順子さん、あなたが未婚で子ナシなのも全てアタシのせいだとでも言うの?(←これはユーミン自身の発言じゃなくて、俺Kontaがイメージで書いてみましたぁ~。)

 

 ユーミンはいわゆる ‘物語の語り部’ でしょ。時代に合った、または時代に先んじた、どんな物語でも歌にできる素晴らしい芸術家ですよ。ユーミンが歌っている女性キャラは、実際のユーミン本人とは別ものです。たとえば、僕がユーミンの歌の中で一番嫌いな「幸せはあなたへの復讐」なんかは、この女、ホントいじましいわね、「青春のリグレット」ならこの女ズルい…とユーミンはちゃんと冷めた目で認識しながらも、あえてそういうシチュエーションを歌にしているだけなのです(たぶん…ね)。つまり歌の中の人物を必ずしも全面的に肯定しているわけではない、と僕自身は考えています。ユーミンが自殺の歌を書いているからって、自殺はいいものだからどんどんやりなさいとか、不倫の歌を歌っているからって不倫は楽しいから推奨しますよと言っているわけではないんです。ユーミンの歌詞にあるからって、それでいいんだよと肯定してくれた寄り添ってくれた…と酒井さんみたいに解釈してよいのなら、極端な話、ユーミンが「三つ数えろよ」という詞に書いた “スプレーで書きなぐる 駐車場のブロックに” という行為だってやっていいことになるよね? 酒井さんの論の進め方って無理があるんじゃないの? 小説家が殺人者の物語を書いたからって、読者に「殺人者になれ」と言ってるわけではないのと同じことですよ。

 それにユーミン自身が「私の歌を最後に仕上げるのは、歌を聞くあなた自身なんです」と言っているでしょ。だから、「私はこう聞きました」的なことを他人に言われても、「へえ、そうなの…」で終わってしまうことが多いんですよ。例えば「DOWNTOWN BOY」だけど、僕にとってこの歌は、都会で生きている人間ならたぶん誰もがこういう経験していると思うんだけど、かつて遊んだ空き地にビルが建ってしまったという時の流れのせつなさや、ビルに当たって反射したあざやかな夕日の美しさのユーミンの描写に、ぐっと心を動かされるのであって、酒井さんが採り上げている部分、階級違いの男子女子という話は、まあどうでもいいことなんですよ。だから「群盲象を評す」じゃないけれど、見てる部分、ユーミンの音楽を聴く人にとって意味のある部分というのはそれぞれ違っていて、普遍的に語ることは出来ないし、ユーミンを一般論で語られても仕方がないんですわ。ユーミンの一部分しか触っていないのに、それをあたかもユーミンの全体像であるかのように語っているだけですよ、この本で酒井順子さんのやっていることは…。

 僕はユーミンのコンサート、毎回一人で行くのだけど(その方が集中出来るからね。)、コンサートに来ている周りの人々を見ていていつも思います、“この人たちの聞いているユーミンと僕の聞いているユーミンは全く別物だ” と…。ユーミンっていつでも ‘自分だけのユーミン’ なんです。ユーミンの音楽は、皆で聴く音楽でも皆で歌う音楽でもないと、僕は思っています。だから、アンコールで「卒業写真」歌われて、周りの多くが手拍子して、一緒に歌ってるの見るのはホント最悪なんだわ。あれで一気にシラけるの。これは昔からずっとそう。「卒業写真」を合唱して何が楽しいの? ダサっ!!だからユーミン、アンコールでもう「卒業写真」やめて欲しいわ。あ、話がずれてるね。

 で、酒井さん、いつまで負け犬キャラで売っていくつもりなのかしら? 読者もそんな馬鹿じゃないよ。夫と子供がいる平凡な専業主婦のあなたの方が、私より勝ちなんです…とか、あれだけのベストセラーを書いた後で言われても、今さら誰が信じるの?それにさ~、この本に載ってる筆者近影、これ見ても、これぐらいの決して悪くない容姿ならいくらでも綺麗に華やかに奇跡の一枚を撮って載せることも可能だと思うんだけど、自分の売りキャラをちゃんと認識されているのでしょうね、それに合わせているのか、わざと髪をひっつめにして、メガネをかけたまま、読者の反感を買わないようなイケてない負け犬の役割を演じてるとしか思えないわ~。昔オールド・ミスって言葉があったけど、その通りのコスプレかしら? これって欺瞞だよね。滑稽な負け犬を演じていらっしゃるけど、実際はその「負け犬」で儲けた大金持ちよ。成功者なら成功者なりの恰好なさったら? あれほどの大成功を収めた後ではもうかつての「負け犬キャラ」は有効じゃないわよ。一度上手くいったからって、状況が変わった今、再び自己コピーしてもダメよ!(ってお前が言うな!)。それとも、酒井さんは、黒柳徹子さんでさえやっぱり「負け犬」と呼ぶのかしら? 社会や人生がその人に求めた役割(使命と言い換えてもいいんじゃない?)が、単に ‘夫と子供のいる主婦’ じゃなかったというだけのことでしょ?

 それに「DAWN PURPLE」より後のユーミンのアルバムを聞かなくなったって、どういうことなのかしら…?。会社辞めたから、何にも属さなくなったから聞かなくなったって??? 全然説得力ないし…。それ以降はもう、あなたの人生に「美しい音楽」は必要なくなったということなのかしら? ふざけるなっ! 結局、酒井さんにとってのユーミンの音楽って、最初からその程度のものだったのよ。酒井さんって所詮、その時代に流行ってれば何でも聞きますというリスナーの一人にすぎないの。そんな人はドリカムでも、宇多田でも聞いてるがいいわ(これももうだいぶ古かったかしら?)。

 ユーミンの音楽が本当に必要な人っていうのは、たぶん日本に7、8万人ぐらいか?と僕は思ってます。アルバムを200万枚売ってた頃でもあとの193万人は、ただ売れてたから買ってただけの人でしょ。そんな人はもう聞かなくていいから…。つか、あなた達にユーミンのような最上質の音楽を聴く資格、最初からなかったのよ!(←そこまで言うか~っ。お前、何様?)

 酒井さん、OLさんしてた会社を辞めなければこんなことには…と取れるようなことをこの本の終わりあたりで書いていらっしゃるけど、この本を読む人は、その後筆者がベストセラーを書いて大成功したんだということをお忘れなく!結局、ユーミンの芸術を使って、自分の持ちキャラを売り込んでいる本にすぎないということよ。今井美樹ユーミン・カバー・アルバムと同じ、ユーミンのふんどしで相撲をとってるだけなのさ。したたかな女! そういうやり方こそ、酒井順子の罪なんじゃないの? 今この文を読んでるそこのおバカさん、酒井順子には騙されるなよっ!

 

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(↑1987年10月16日号の雑誌「an an / アンアン」(No.597)の表紙になった酒井順子さん。かわいいやん! 今や ‘ブスな負け犬’ を演じて金儲け? なんかカンジ悪いわね~。)

 

(まだ言い足りないわ:「海を見ていた午後」について酒井さんは、この歌の登場人物は「ダサいから泣かない」んだとご丁寧にも解説し、その自分の解釈を読者に強引に押しつけていらっしゃるけど、ユーミンが歌の中で提示しているのは、「泣けなかった」という事実だけなんですよ。それを何の権利と裏付けがあって「ダサいから」なんて勝手に決めつけることが出来るのでしょう? ユーミンが聴く人各自にゆだねていることを、酒井さんが大きな顔して解説するのはおかしいですよね。そういうことはすべきじゃないと思います。)

 

(この文の途中で、なぜかオネエ・キャラ全開になっていってしまったわ。それになんだか成功者・酒井順子さんに対する「やっかみ」みたいな文になっちゃったわね。キャハハ、我ながら情けない…。でも「ユーミンの罪」は単に ‘笑える本’ としてだけなら、そんなに悪くないよ(←ホンマか?)。 でも「新書」って、いつから単なる ‘お笑い本’ に成り下がったのかしら?)

 ユーミンの写真は、雑誌「POPEYE / ポパイ」1979年6月10日号ー56号の40頁より。

 

ユーミンの罪 (講談社現代新書)

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負け犬の遠吠え (講談社文庫)

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