Kontaの歓びの毒牙

映画と音楽が大好きです。ホームページ KONTABLOID はこちら http://www5d.biglobe.ne.jp/~ktabloid/

大毎地下劇場 その2 名画の殿堂 西梅田 毎日大阪会館南館地下

 引き続き、大毎地下劇場について…。

 

懐かしすぎる今はなきこの建物、毎日大阪会館北館(左)と南館(右)

f:id:KONTA:20201102021225j:plain

北館11Fでは大毎地下名画鑑賞会が開催され、南館地下には大毎地下劇場がありました。写真中央に、南館2Fの毎日ホールへと上がる階段が見えています。日建設計工務株式会社の「10周年記念作品集」という本(1962年7月1日発行)の58頁からです。ネットの情報で知り、古本で手に入れた全210頁ほどの立派な写真集です。送料込みで5840円でした。いいでしょう~?

  

f:id:KONTA:20201102024038j:plain

大毎地下ニュース 1977年8月号(第21号) サイズはB5x8頁ではなく、B4x4頁です。

 

 私が初めて大毎地下劇場へ行ったのは、1977年の8月、中学2年の夏休みのことでした。上の大毎地下ニュースはその時頂いたものです。すぐに友の会会員になり、1993年3月の閉館まで途切れることなくずっと会員でい続けました。だから友の会ニュースは第21号(1977年8月号)から最終号の第208号(1993年3月号)まで、今でもすべて持っていて大切に保管しています。

 

f:id:KONTA:20201102025345j:plain

私の大毎地下友の会ニュース、上から古い順に重ねるとこの厚さに。黄ばみ具合が時の経過を表しているようです。映画の紙媒体資料としても貴重なものですよん。

 この友の会ニュースですが、全問正解者に招待券のプレゼントがあるクイズあり、映画に関する連載の読み物あり、大毎のお客さんから届いた手紙やイラストの掲載あり…という盛沢山の内容で、いくらそれがお仕事とはいえ、この充実した内容で20年近く途切れることなく毎月発行し続けたスタッフ・執筆者の方々の情熱がひしひしと伝わってきますよ(注:初期の頃の友の会ニュースは、数ヶ月に1度の発行だったようです)。

 

 ところで、私が初めて大毎地下劇場で観た映画は 「がんばれ!ベアーズ / The Bad News Bears」(1976)、「キングコング / King Kong」(1976)の2本立てでした。劇場の入口から入ると、右手のロビーのガラスケースのカウンターに、これまで上映された映画作品のパンフレットで在庫がまだあるものが色々並べて売られていて、私は喜びました!それと同じく映画のポスターも一枚100円で販売されていて、こちらは残っている作品の、手書きのリストが掲示されており、欲しいタイトル伝えるとスタッフの方が、折り目がつかない程度にゆるく三つに折ったポスターの束から、希望のものを抜き出して丸めて渡してくれるという販売方法になっていました。まずその日は、当時大ファンだったライアン・オニール(Ryan O'Neal)の「ある愛の詩 / Love Story」(1970)や、マーク・レスター(Mark Lester)の「小さな恋のメロディ / Melody」(1971)、そしてその日に観る2作品のパンフレットなどを買い、次回来るときはもっとたくさんお金を持ってきて、欲しいパンフレットとポスターを沢山買うぞ!と思ったものでした。

 

ある愛の詩 / Love Story」の主演二人 

f:id:KONTA:20201104234814j:plain

愛とは決して後悔しないこと…”、ライアン・オニール、お前が言うなっ!!

 

 劇場の入口から左手に進むと一番奥は男子トイレ、その手前に女子トイレ、そして入口に一番近い場所に、テレビとソファの置かれたコーナーがあり、そのテレビでは決められた時間から、録画した名作映画のビデオを流してくれていましたので、友の会ニュースに掲載されたスケジュールで確認し、その中にテレビ放映で見逃した映画などがあれば観ることもできました。またこの待合コーナーには、誰でも自由に記入したり読んだりしていいノートが置かれていて、上映までに時間がある時など、それを見て楽しむことが出来ました。さらにこのコーナー近くに、自分の意見などを書いて入れることのできるポストも設置されていましたから、上映希望作品のリクエストの手紙を入れたりも可能でした。こういったところが大毎地下の素晴らしいところです。大毎地下劇場の上映作品だけに関していうと、ミナミの戎橋劇場と大差はないのですが、お客に対するこのサービス精神と家族的な雰囲気は、大毎地下ならではのものでした。

 

大毎地下劇場の入口とその奥のカウンター

f:id:KONTA:20201110164111j:plain

1981年10月末頃に撮影されたものだと推測されます。雑誌「バラエティ」1982年2月号47頁「名画座ガイド」のコーナーの大毎地下劇場の回に掲載されたものより。

 

 友の会会員に送られてくる招待券なのですが、この券が大毎地下劇場での上映作品にだけに有効で、名画鑑賞会では使えないことを知らなかった中学時代の私は、この招待券で観ようと名画鑑賞会に行きました。窓口で招待券を出すと、これでは入場出来ないと言われ、その時はショックでした。幸いお金を余分に持って行っていたので、その時はお金を払って映画を観ることが出来ましたが…。その後、ちゃんと招待券に“名画鑑賞会(文化ホール)は御使用になれません。”と但し書きが小さく印刷されるようになりました。また何年後かには最終的に、招待券で名画鑑賞会も入場できるよう変更になったようです。こういった、問題のあるところは改善していこうという姿勢もとても好感がもてましたね。

 

f:id:KONTA:20201106215654j:plain

1986年6月、朝日新聞掲載の大毎地下の広告

 

 毎日大阪会館北館11F毎日文化ホールで開催されていた大毎地下名画鑑賞会ですが、私がここで初めて観た映画は、同じく中学2年だった1977年の8月のプログラム「アメリカン・グラフィティ / American Graffiti」 (1973)、「理由なき反抗 / Rebel Without a Cause」(1955)の2本立てでした。その日は、すごい人人人…超満員で、もうびっくり!ホールの奥の階段から上がる2階席もありましたし、これだけ人が集まると、このホールのトイレはやはり数が少なすぎたのではないかと思います。下の他の階に降りていってそこのトイレを使うことも可能だったのでしょうかね~?この名画鑑賞会では映写機が1階座席(並べたパイプ椅子)へ向かう時に通るカーテンの少し左手奥に置かれていて、映画上映が始まってから遅れて座席につく人がその前を通ったりすると、人影で映像が消えてしまうということもしばしば起こりましたよね。

 

毎日大阪会館北館のエレベーター(左11F止まり、中10F止まり、右9F止まり 会館の玄関は右手に)と 階段の手すり 1956年

 

 この北館の建物なのですが、11Fまでエレベーターは1台だけで、他2台のエレベーターは10Fと9F止まりで、あとの階は階段を上って行っていました。それと1階玄関から入って右方向に進むとレコード店、ワルツ堂堂島店に通じるガラス張りのドアがあって、近くに建物の1階から2階に上がる階段もありました。この階段が木製の手すりのついた凝ったデザインの素敵なものだったように、ぼんやり憶えているのですが、2020年11月現在その写真はネットでは見つけられませんでした。どこかにかつての姿をうつした写真、残っていないのでしょうか?この階段がなんだかとっても気になっていて、無性に見たい気がしているのです。

 

2023年3月29日追記:見つけました!毎日大阪会館北館玄関ロビーの階段写真、1956年に発行されたある雑誌の中に…。この階段の左下にワルツ堂堂島店に抜ける扉がありました。これら全てが、もう残された写真と我々爺婆の記憶の中にしか存在しないんですね。

 

 大毎地下で観た映画で、私にとって特に印象的だった作品を、10本ほど挙げたいと思います。 まずは1977年11月に「ザ・ディープ / The Deep」(1977)(ドナ・サマー Donna Summer の歌う主題歌「The Deep / Down, Deep Inside」が超素敵!)との2本立てで観た「パピヨン / Papillon」(1973)です。この映画の中では美青年マチュレットとトルコ人看守の男の場面が大好きなんですわ~。

 

マチュレットは美しい男 Maturette (Robert Deman)

f:id:KONTA:20201106150752j:plain

そんな好きな男の為に、花を摘んで持って来るなんて…

Turnkey (Allen Jaffe) & Maturette (Robert Deman)

f:id:KONTA:20201106150841j:plain

こんなイカツい看守のおじさんが可愛いじゃありませんか~っ。マチュの美しい身体をナデナデ…

看守 Turnkey (Allen Jaffe)

f:id:KONTA:20201106150930j:plain

好き~っと表情で語っています。

Maturette (Robert Deman)  & Turnkey (Allen Jaffe)

f:id:KONTA:20201106151031j:plain

とうとうマチュレットに誘われて喜ぶ看守…でもこの後が、あぁ無情…。マチュ、せめて一度だけでも、このおじさんにいい思いをさせてあげて~っ。

 

 マチュレットと看守とのエピソードがと~っても良いものだから、その日は最初に「パピヨン」それから「ザ・ディープ」という順で観たのですが、「ザ・ディープ」が終わったあと、次の回でもう一度「パピヨン」のこの場面(えへへ)まで観てから、大毎地下を後にしました(アンタも好きだわね~。そうよっ、俺、美男とゲイ話大好きですけど、何か?)。

 

 それから、1978年6月、「ボビー・デアフィールド / Bobby Deerfield」(1977)と2本立てで観た「ミスター・グッドバーを探して / Looking for Mr. Goodbar」(1977)。この映画はその後も所有しているVHSビデオで何度も何度も観るほどのお気に入りです。

f:id:KONTA:20201106152438j:plain

サントラ・アルバムも最高っ!!当時の雑誌「アンアン / an an」からの切り抜きより

Looking for Mr. Goodbar ←サントラCD

f:id:KONTA:20201106223106j:plain

出演した俳優陣もみんな素晴らしいんです。「ミスター・グッドバーを探して」

f:id:KONTA:20201106153023j:plain

ゲイリー(トム・ベレンジャー Tom Berenger)は左の男に囲われてるの~。いやん!

 

 次には、1980年12月、「緑色の部屋 / La chambre verte」(1978)と2本立てて観た「プロビデンス / Providence」(1977)。

f:id:KONTA:20201106155847j:plain

アラン・レネ(Alain Resnais 1922 - 2014)監督作品「プロビデンス / Providence」

 

 高校2年だったその日は、仲良かった友人Sと二人、授業を昼から早退して13:50からの上映があった天王寺ステーションシネマでの「ラスト・タンゴ・イン・パリ / Last Tango in Paris / Ultimo tango a Parigi」(1972)を観に行ったんです。ギリギリその時間に間に合い窓口で券を買おうとして「学生1枚」とSが言ったら、窓口のおじさんに「成人映画やからあかん!」と言われてしまいました。そしたらSがとっさに「留学してて1年遅れてるから18歳や」と大ウソで答えて(←これには僕も心の中で大爆笑)、その後もSはそうとう食い下がったのですが、結局ダメで、窓口のおじさんには「私服で来たら入れたる」という言葉で会話を打ち切られてしまいました(涙)。それで、どうしようか~と2人で話し合って天王寺から西梅田大毎地下に向かうことに決めました。そこで観たのが「プロビデンス」でした。

 

f:id:KONTA:20201106160002j:plain

映画「プロビデンス」の冒頭のクレジット

 

Helmut Berger & Yves Saint-Laurent

f:id:KONTA:20201106221542j:plain

ヘルムート・バーガー様 と サンローラン


 この映画はですね~、サンローラン(イヴ・サン=ローラン Yves Saint-Laurent 1936 - 2008)が担当したエレン・バースティン(Ellen Burstyn)とダーク・ボガード(Dirk Bogarde 1921 - 1999)の衣装がとても素敵だったんです。本当に強い印象を私に残しました。それで、あの美しいファッションをもう一度見てみたい!と思って、何年もたってから中古ビデオを手に入れました。そして改めて観なおしてみて愕然!としました。マスター・フイルムの劣化でしょうか?画面の色落ちがすごくて、映画館で見た美しい色とまったく違っていたのです。

 

f:id:KONTA:20201106160726j:plain

美しい青だったエレン・バースティンの衣装がなぜか灰色に…。

 

f:id:KONTA:20201106160838j:plain

鮮やかさに目を見張ったダーク・ボガードのピンクの花柄のシャツがこんなヒドイ色に…。

 

 再見した「プロビデンス」、ホンマに悲しい色やね、でしたわ。

 

 大毎地下劇場で私が最後に観た2本は1992年6月の「ナック / The Knack ...and How to Get It」(1965)と「ザ・コミットメンツ / The Commitments」(1991)でした。この「ザ・コミットメンツ」は本当に楽しく音楽にあふれたいい映画でした。今はもちろんVHSビデオで所有していて、周りの人間に見せたりしています。アラン・パーカー(Alan Parker 1944 - 2020)は「小さな恋のメロディ」の原作・脚本を始め、「ダウンタウン物語 / Bugsy Malone」(1976)、「ミッドナイト・エクスプレス / Midnight Express」(1978)、「フェーム / Fame」(1980)…数々の素晴らしい映画を我々に残してくれました。

 

f:id:KONTA:20201106171701j:plain

 1992年の秋、タイ・バンコクの路上で買ったあやしい激安カセット・テープのカバー。「ザ・コミットメンツ / The Commitments」は使われている曲も好みです。

 

以上の4本が大毎地下劇場で観た私のお気に入りです(ホントはもっともっとあるのですが、ここではこれらの作品を挙げておきます)。

 

毎日大阪会館南館 ここの地階に大毎地下劇場がありました。

f:id:KONTA:20201104011748j:plain

https://www.obayashi.co.jp/chronicle/100yrs/t2c2s99.html

この上の画像はこちら↑から頂きました。ありがとうございます。

 

私が大毎地下劇場で観たプログラム


1977年08月 「がんばれ!ベアーズ」「キングコング
1977年08月 「ある愛の詩」「キャリー」
1977年09月 「追憶」「キャリー」
1977年09月 「アデルの恋の物語」「トリュフォーの思春期」
1977年10月 「合衆国最後の日」「スター誕生」
1977年11月 「ロッキー」「遠すぎた橋
1977年11月 「ザ・ディープ」「パピヨン
1977年12月 「草原の輝き」「理由なき反抗」
1977年12月 「おもいでの夏」「ジェレミー
1978年01月 「ビリティス」「シビルの部屋」 
1978年06月 「マイ・ソング」「風と共に去りぬ
1978年06月 「おかしな泥棒 ディック&ジェーン」「真夜中の向こう側」
1978年06月 「ボビー・デアフィールド」「ミスター・グッドバーを探して」
1979年03月 「プリティ・ベビー」「帰郷」
1979年04月 「ジュリア」「結婚しない女」
1979年05月 「幸福の旅路」「グッバイ・ガール」
1979年05月 「ナバロンの嵐」「グローイング・アップ」
1979年06月 「勝手にしやがれ」「家族の肖像」
1979年06月 「アシャンティ」「グレートスタントマン」
1979年07月 「ファール・プレイ」「スティング」
1979年07月 「アバ・ザ・ムービー」「ローマの休日
1979年08月 「スター誕生」「追憶」
1979年09月 「ハリケーン」「エーゲ海に捧ぐ
1979年10月 「インテリア」「アニー・ホール
1979年11月 「時計じかけのオレンジ」「エイリアン」
1979年12月 「バレンチノ」「ウェディング」
1979年12月 「エデンの東」「ジャイアンツ」
1980年05月 「ジャスティス」「ノーマ・レイ
1980年06月 「ある愛の詩」「ロミオとジュリエット
1980年06月 「ルナ」「女の叫び」
1980年07月 「出逢い」「追憶」
1980年11月 「青い珊瑚礁」「わが心のジェニファー」
1980年12月 「プロビデンス」「緑色の部屋」
1981年02月 「クレイマー、クレイマー」「チャンプ」
1981年02月 「アーバン・カウボーイ」「ミュージック・ミュージック
1981年06月 「テス」「ロミオとジュリエット
1981年06月 「スター誕生」「ローズ」
1983年04月 「炎のランナー」「黄昏」
1983年05月 「わたしは女優志願」「追憶」
1983年08月 「マイ・フェア・レディ」「アニー」
1983年10月 「山猫」「イノセント」
1983年11月 「評決」「ガンジー
1983年12月 「追憶」「レッズ」
1984年01月 「地球に落ちて来た男」「戦場のメリー・クリスマス」
1984年02月 「愛と哀しみのボレロ」「ひまわり」
1984年02月 「ある夜の出来事」「ローマの休日
1984年02月 「隣の女」「評決」
1984年05月 「フェーム」「オール・ザット・ジャズ
1984年06月 「終電車」「隣の女」
1984年08月 「ベニスに死す」「地獄に堕ちた勇者ども
1984年10月 「ウイズ」「ブレイクダンス
1985年03月 「フォート・サガン」「ひまわり」
1988年06月 「追いつめられて」「夜霧のマンハッタン」
1989年09月 「ポゼッション」「カルテット」
1991年05月 「バグダッド・カフェ」「ドラッグストア・カウボーイ」
1991年06月 「シェルタリング・スカイ」「ハリウッドにくちづけ
1992年06月 「ナック」「ザ・コミットメンツ

 

なんだかどんどん長くなりそうなので、あと6本の大毎地下名画鑑賞会で観たお気に入り映画は、

大毎地下劇場 その3 名画の殿堂 西梅田 毎日大阪会館南館地下

http://k0nta.hatenablog.com/entry/2020/11/09/221621

に続けることにします。

 

 

The Deep

The Deep

 
パピヨン [Blu-ray]

パピヨン [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Blu-ray
 
Providence

Providence

  • メディア: DVD
 
The Commitments: Original Motion Picture Soundtrack

The Commitments: Original Motion Picture Soundtrack

  • 発売日: 1991/08/13
  • メディア: CD