久々にいい映画を観ました。楽しめるし、すごくエロチックでもありました(といっても、僕にとってエロいだけなんですけど…)。2010年に発表されたベルギー映画で「GLENN, THE FLYING ROBOT / GLENN 3948 - LE ROBOT VOLANT」という日本未公開の作品です。監督・脚本は1967年生まれの マルク・ゴールドシュテイン(Marc Goldstein)という人。83分という短さもあるけれど、もう3回も観てしまいました。
マルク・ゴールドシュテイン監督 と ドミニク・グールド 映画「GLENN」の演出中
Marc Goldstein and Dominic Gould
映画完成まで3年かかったということですので映画の撮影はたぶん2007年頃に行われたものだと推測されます。
マルク・ゴールドシュテイン監督はこんな人↓
MARC GOLDSTEIN OFFICIAL SITE:
http://www.marcgoldstein.eu/index.html#
ドミニク・グールド 「GLENN, THE FLYING ROBOT」(2010年) 撮影は2007年頃?
Dominic Gould in "GLENN, THE FLYING ROBOT (GLENN 3948 LE ROBOT VOLANT)"
監督自身がホームページでこのSF映画のあらすじを書いておられますのでそこから引用させていただきますね。脚本を担当した監督本人の文章が一番正確だと思うので。
"Henry (Dominic Gould) and Jack (Billy Boyd) are two famous and talented pianists: they are rivals and try to outdo each other in the various music events where they regularly compete. They have known each other since their days at the music academy and developed a very strong friendship. They met Lana (Smadi Wolfman) there and Jack had an affair with her then.
This friendship deteriorated along the years and Lana left Jack for Henry. Jack’s resentment towards Henry will increase even further when he realizes that although his talent as a pianist is as great a talent as Henry’s, he always ended up second … behind Henry.
Simultaneously, Lana slowly realized that the only thing Henry cares about is his job. When she gets pregnant, he tells her he doesn’t want the child and she leaves him, taking refuge with Jack who thus finds a way to get back at Henry.
From that point, the former friends will clash with no mercy, from contest to contest until the day a domestic robot, GLENN, enters their lives. GLENN will jeopardize everybody and everything around them but will also lead them into the most challenging soul searching..." - Written by Marc Goldstein
ドミニク・グールド(Dominic Gould)はエゴイスティックなピアニスト、ヘンリーを演じています。長年の知人で、同じくピアニストのジャック(ビリー・ボイド Billy Boyd)とは昔からライバル同士。ジャックの元恋人で、今はヘンリーの彼女である女性ラナ(スマディ・ヴォルフマン Smadi Wolfman)の事で激しい喧嘩になった際、ヘンリーが思いっきり閉めたドアでジャックは右手に大けがを負ってしまいます。
「Henry Goldmill plays Brahms」のCDを手にとるジャック。右手に大けがをして…
ピアノが弾けなくなったジャックは仕事も失い、3948という家庭用ロボットの助けを借りながら、酒浸りの生活を送るようになります。またジャックは父(パトリック・ボーショー Patrick Bauchau)との確執という別の問題も抱えていました。
↓これがニューヨークのジャックのロフト 。ロボットがお世話してくれています。
Dominic Gould in "GLENN, THE FLYING ROBOT (GLENN 3948 LE ROBOT VOLANT)"
いつも仕事が第一のヘンリーはヘンリーで、妊娠したというラナに「子供はいらない」とキッパリと言い放ち、愛するラナに去られてしまっていたのでした…。
Dominic Gould and Smadi Wolfman in "GLENN, THE FLYING ROBOT" 2010
その後、ジャックのロボット3948には驚異的な学習能力が備わっていることが判明し、 ジャックは3948にピアノを教え始めます。そしてそのロボットはピアニストのグレン・グールド(Glenn Gould 1932 - 1982)の名前からとって「GLENN」と名付けられるのでした。
しかしある夜に自暴自棄なジャックが酔ってつぶやいた一言を、今やGLENNとなったロボット3948が、主人の指示と解釈しそれを実行に移し始めたことから、二人のピアニスト、ジャックとヘンリーはとんでもない窮地に追い込まれることになるのでした…。
ドミニク・グールド Dominic Gould dans "GLENN 3948 - LE ROBOT VOLANT"
右側がジャック、「ロード・オブ・ザ・リング」のビリー・ボイドが演じています。
Dominic Gould and Billy Boyd in "GLENN, THE FLYING ROBOT" 2010
ドミニク・グールドのピアニストといえば1987年の「エリザとエリック」ですよね。
Dominic Gould et Gaël Seguin dans "JEUX D'ARTIFICES" 1987 ガエル・スガンと
ジャックに殴られ口から血を流すヘンリー
ふたりが追い込まれた、死が一刻一刻迫りくるギリギリの状況を脱出する唯一の方法は、GLENNの要求に応えることだけでした。「今はヘンリー自身の弾き方ではなく、グレン・グールドのように弾くんだ!」ジャック指導でバッハ(Bach)の「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第2番 ハ短調 BWV847 前奏曲 / Das Wohltemperierte Klavier / The Well-Tempered Clavier」を弾き始めるヘンリーでしたが…
Billy Boyd and Dominic Gould in "GLENN, THE FLYING ROBOT" 2010
癇癪をおこし不注意にも、今度はヘンリー自身が左手に怪我を負うはめになってしまいました。ピアノが弾けなくなったふたりに死の危機がいよいよ目前へと迫ります。そして、ジャックとヘンリーは…
ぴったりと寄り添って(むふふ)、まだ動くヘンリーの右手とジャックの左手で、この曲を試してみることに、最後の望みをかけるのでした。
いやあ、このシーンがものすごくエロチックなんですわ。 個人的には、映画「ゴースト / ニューヨークの幻」のあの‘ろくろ’のシーンを思い出してしまいました。えへへ…。
片手ずつで一曲を弾くふたり。 左側がジャックの指、右側がヘンリーの指、きゃあ!
「曲は諳んじてるだろ。目をつぶって弾くんだ」と、途中で投げ出しそうになるジャックに集中することを指示するヘンリー
ふたりでひとつの頂点を目指して登りつめるヘンリーとジャック、まさしく愛を交わしているかのように…。いやん!この場面がもうエロエロですよ。こんな恍惚の表情って、ジャックったら…。
そして、とうとうふたりは…(あとはネタバレになるので秘密ですよん)。
どうでしょう、この映画、観てみたくなりましたか?
使われているクラシック曲もなかなか良いんですよ。こんな↓曲たちです。
Dominic Gould ドミニク・グールドのピアノを Mamia Akhveldiani
Billy Boyd ビリー・ボイドのピアノを Julien Libeer
という方が、それぞれ吹き替え(弾き替え?)ています。
Julien Libeer さんのホームページはこちら:
http://www.julienlibeer.net/
人工知能と人間の勝負がニュースになることも多い現在、この映画、とても興味深い問題を扱っていると思います。映画は英語版がオリジナルですが、僕が買ったのはフランスのDVDで、英語音声にフランス語の字幕付きのものと、フランス語吹き替えヴァージョン、メイキング映像、もう一つのエンディングも収録されており、大変楽しめました。演技をしていない姿のドミニク・グールドも見れたし、フランス語の勉強にもなりました(ホンマか?)。ニューヨークで撮影されていますが、メイキング映像では映画製作のスタッフもほとんど皆、フランス語で話しています。そうそう、映画にはジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)もニュースキャスター役でちょっとだけですが出てきますよ。ただ、監督自身があらすじの中で書いている、若い頃のヘンリー、ジャック、ラナの関係の描写が、映画の中に数分でもあれば(例えば、学生時代の3人の写真を映しだすといったようなことだけでも)、もっとこの物語に奥行と分かりやすさが付け加わったかなと、そこは少し残念に思いました。
マルク・ゴールドシュテイン監督 と ドミニク・グールド 映画「GLENN」の演出中
Marc Goldstein and Dominic Gould
マルク・ゴールドシュテイン監督とラナ役のスマディ・ヴォルフマンがブリュッセルの映画祭でこの映画について語っています↓。
BIFFF 2010 - Q&A Marc Goldstein and Smadi Wolfman for Glenn 3948:
https://www.youtube.com/watch?v=C_uPGr4-Xgc
Zoom sur Glenn 3948 de Marc Goldstein:
https://vimeo.com/29648873
こちらは映画「エリザとエリック」のピアニスト、スタン役のドミニク・グールド
Dominic Gould dans "JEUX D'ARTIFICES" de Virginie Thévenet 1987
↑スイス、湖畔のホテルのテラスでピアノの前に座るスタン カッコいいね!
映画の予告編はこちら
Glenn The Flying Robot Movie Trailer:
https://www.youtube.com/watch?v=meEF4-W26JM